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飯田かずな
「MIRACLE STARS」(時鐘舎)
『写真における輝きとは?』
CMや雑誌の世界でまさに第一線で活躍している飯田かずなの、待望の写真集が刊行されている。しかし、経歴からいえば、コマーシャルフィルムや短編映画、雑誌やCDジャケットなども手がけるその手腕の広さからして、写真家という肩書きを超えて、まさに多才なアーティストと呼ぶにふさわしいといえよう。この写真家の名を知らない人でも、SMAPの草?剛扮するアジアのポップスター、チョ・ナンカンのジャケットなどでその作品を知る人も多いだろう。今回の写真集は、これまでにさまざまな媒体で公開された作品の集大成といえ、掲載されているそれぞれの発表時期や掲載媒体は異なるものの、一冊を通してみると、作者の一貫したアプローチが見て取れる。それは、本書の帯書きのコピーにあるように、一様に「みんな、キラキラ」しているということだ。
では、飯田の「キラキラ」感とは何か?それは、「輝き」とは違う。いや、むしろ、「過剰な」輝きなのだ。
写真とはそもそも、感光フィルムに寸秒の光が差し込んで焼き付けられた、光の痕跡だと捉えるならば、飯田の写真では明らかにその光を意図的に増幅しようと試みていることが分かる。通常の撮影においてそのように意図した場合、露出を操作したりといった従来の撮影技術があるのにもかかわらず、飯田はあえてその試みは避けようとしているようにみえる。では、カメラの操作を通じた光の操作以外に、どのように光の増幅のための戦略をとるというのか?そこで(確信犯的に?)飯田が選択しているアプローチが、撮影の際の演出によって、という戦略である。
たとえば、一枚目の写真「天龍のおじさん」がかぶるコック帽の白と対比されて異様にどぎつく感じられるように配置されたカナリヤの羽の色。また、多くの写真の背景に登場する、十字の白色プリズム、また、雑誌「BARFOUT!」に掲載された写真に登場する、幾多のミラーボールに囲まれ、ピカピカのスパンコールに身を纏った歌手のハルカリ。そして、その前に設置されたスタンドマイクのメタリックでソリッドな輝き。また、被写体になる人物は、時として、どぎついピンクの配色のドレスに身を包み、夢見る乙女を演じることを命じられることになる。そうなると、あのブスキャラ?の森三中でさえも「輝く」。その演出はメークといった細かなところにもほどこされ、原色の花束を乙女のように胸元に抱える伊藤英明の瞳の中はハートに輝き、絵の具でべったりと塗ったと形容してもいいくらいの濃いアイシャドウや、さまざまな色のカツラ、「ウサギ」シリーズにおける、ウサギのかぶりものといったアイテムまで撮影では使用されている。
それらのアイテムは、それぞれ主張が強い色(光)を放つものばかりで、かつ、物質や素材の持つ「重さ」とは程遠い、ポップでキュートなものばかりだ。それらのアイテムのキッチュな「軽さ」によって、被写体の輝き自体を殺さないように巧妙にバランスがとられていたりもするから、飯田の戦略はかなり狡猾に機能しているといってもいいだろう。なぜなら、背景やアイテムの主張がはげし過ぎると、フォーカシングがずれて、写真は軸を失い、空中分解してのっぺりとした光の集積になってしまうからだ。この絶妙なバランスによって、光を投射するといった従来の輝き以外の「新しい輝き」を、飯田はその写真に取り込むことに成功している。光を照射することだけでなく、被写体の配色によって輝くこと、ポージングや着ぐるみや化粧によってカメラの前の被写体に弛緩した楽しさを生み出させ、その空気感を表現すること。飯田の写真における「キラキラ」とは、このようにして生み出される、「新しいかたちの光」なのだ。
さらにいえば、被写体になっている人物は、どれもテレビや雑誌の世界で活躍している人たちばかりで、普通の目線からしてみれば、キャスティングだけでも十分に「キラキラ」している。だから、何気なく普通にスナップ写真を撮ったとしても、それだけで、無名の人たちよりははるかに輝きがある人たちばかりといえよう。それらの人物が飯田の脚色されたレンズに透かされると、さらに輝きを増す。輝きに輝きを増すという、そのキャスティングの妙も、写真の「キラキラ」感の増幅に貢献しているといえよう。
この写真集には付録として、これまでに飯田が手がけた映像作品を収録したDVDも添付されているので、飯田かずなの入門書としては絶好の写真集といえる。そのDVD所収の「タカランド」から聞こえる、おもちゃの笑い袋のハイテンションな笑い声や、アフロダンサーがかけている巨大で派手なサングラスも、写真撮影のときと同じような「キラキラ」のための仕掛けとして捉えることができるだろう。
飯田かずなは、写真において輝くとはどういうことか?を問い続ける写真家である。
(高井君貴/2006.4.7)
飯田かずな『MIRACLE STARS』(時鐘舎)2940円
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